批判精神と親友でありたい

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『事件現場清掃人が行く』 高江洲敦

 

「最近、虫が増えた?隣室のご遺体からのサインかもしれません」

いわゆる、世で言われるところの「事故物件」が綺麗になる前にどうなっているかということについて、事件現場清掃を担当している高江洲敦氏の本。

感想としては、実際の仕事内容に興味が湧き、また遺体、遺族などに関わる立場にいることからか、とても慎重に言葉を選ばれているといった印象。本人の誠実な人柄が文章の行間から滲み出してきている。

特殊清掃という仕事自体にも興味をそそられたが、何よりも今、孤独死が増えているということに対して氏が警鐘を鳴らしていることに共感した。

現在、なんとなく人と人のつながりが希薄になってきており、生きていこうと思えば一人でも生きていけるが、いざ自分が一人になって病や怪我を患った時に助けてくれる知り合いはどれくらいいるだろうか。こと自分を例にとって考えてみると怖い気がした。

自殺者の部屋は凄惨である。遺体は筋肉が弛緩しているため、糞尿がもれており、さらに時間が経てば経つほど状態が悪化するらしい。

そのため、数か月も発見されなかった遺体は損傷が著しく、体液が漏れ出してアパートなどの場合、その下の階の天井まで到達するらしい。

そのような環境の中でも氏は「ご安心ください。血も体液も、私がきれいに後始末をしましょう」と、プロ意識をもって死者の後片づけを担当している。

 

また、氏の仕事の一環として後天的に片付けが苦手になってしまった風俗嬢たちの部屋を片付けることもあるらしく、そこでの記述も興味深かった。

181~182頁『しかし、可愛がることと動物を飼育することは別で、彼女たちは餌を与えても汚れた皿を洗わず、散歩にも行かず、犬のフンまでそのままにしているのです。私が見た部屋には、ドッグフードと犬のフンが同じようにあたりに転がり、かわいらしい子犬は不思議そうな顔をして、掃除をしている私を見つめていました。おそらくこの子犬は生まれてはじめて、掃除をする人間の姿を見ていたのだと思われます。』

 

追記します

 

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