批判精神と親友でありたい

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『傷だらけの果実』

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新堂冬樹という作家の作品が好きです。いわゆる大衆受けを狙ったエンターテイメント系作品が目立つのですが、何か本を読みたい時や、電車の中で時間を忘れて読むのに打ってつけ。

この著者は、ファンからは「黒新堂」と「白新堂」という分け方をされていて、主に黒の作品はエログロ、凄惨な描写が多く、刺激的で大衆向け。白新堂が、まさかあれだけ作中でか弱い人々を拷問にかけて残虐に殺していった新堂氏が書いたとは思えない程ピュアで心温まる作品が多い。

今回の作品はその中間「灰色新堂」とでもいうべきものかと思った。

粗筋としては、ディレクターを目指していた早徳大学の裕二が、ある日歌舞伎町でホストや連れの女性に容姿について罵詈雑言を吐かれて泣きじゃくっている菊地緑に声をかける。

「50万用意しろ。そしたら俺がお前を変えてやる」といい、目の整形手術を受けさせたのを皮切りに、鼻などにも手を入れさせていった。

それを邪魔する大学のクラスメイトや、緑の父親、芸能プロダクションのマネージャーたち。それを二人で乗り越えていくものの、裕二は当初からある決心をしていた。それは、どれだけ長い時間ともにいようとも、彼女を”女”としては見ないということだ。

「ゆうちゃんにとって私はなんなの?」

「・・・・商品だ」

と、この受け答えが作中で何回かされている。

しかし、最後になって裕二が緑に対して

「芸能人が歯並びを整えるのは当然だ。八重歯は邪魔になるから抜いてこい」

といってから緑の行方がわからなくなる。お互い気づかないうちに「商品」として扱われることが堪えられなくなっていたのだ。

ラストは心温まるといえば、そうかもしれない。

作中に出てくるマネージャーが陰険で、こういう人がいたら関わりたくないなぁ。

 

 

女優になるには、エステサロンなどに投資しなければならないかと思っていたが、235頁『一日の飲食物をメモに取り、カロリー表をつける。摂取カロリーを一日千三百カロリー以内に抑える。炭水化物は白米のみで、パスタ類やパン類は吸収し過ぎて脂肪がつきやすくなるので摂らない。店ではアルコールはもちろん、炭酸飲料は飲まずにウーロン茶だけにする。起床したら五キロのウォーキングをする。裕二がネットや書籍で調べた結果、エステティックサロンなどに頼らずとも日常生活においての食事管理とウォーキングを規則正しく続けていれば、個人差はあるが三カ月で十キロは落とせるらしい。

最終的にエステティックサロンに行くとしても、事前に自主ダイエットをしているのといないのとでは、効果が出るスピードに雲泥の差があるという。」と。これらが行われている描写があってもよかったかもしれない。

 

また、どのような人物が女優に相応しいのかということについて、

84頁『なぜなら、数百から数千のタレント達と接してきた百戦錬磨の監督やプロデューサーを魅了するほどの女の子は、自己というものをしっかり持っている。決して、周囲の人々の意見や環境に流されない強い意志の持ち主だけが、「選ばれし者」になるのだ』と。

 

これは整形を扱った話でもあるんので、関連本でもある『アンチエイジング』の方も読んでみたい。